高いから買わない、と決めていました。
今使っているiphoneで何の不自由もない。新しい機能も、自分には必要ない。そう判断したはずでした。
なのに、なぜか欲しくなってくるのです。
iPhone Duoの広告を見て、レビューを読んで、YOUTUBEを見て。あんなにいらないと思っていたのに、気づけば「まあ、買えないこともないか」と考えている自分がいます。
これは、何なのか。
その答えが書いてあったのが、今回紹介する本です。
目次
- 投資はメンタルゲームである
- 収入 − エゴ = 貯蓄
- 「ウェルス」と「リッチネス」は違う
- 自分がやっているゲームを明らかにする
- 人生をコントロールできるということ
- 目指すのは金持ちではなく、経済的自立
- この本について
投資はメンタルゲームである
『サイコロジー・オブ・マネー――一生お金に困らない「富」のマインドセット』 モーガン・ハウセル 著/児島修 訳/ダイヤモンド社
この本が一貫して伝えているのは、お金の問題の大半は、知識ではなく心理で決まるということです。
投資で失敗する原因は、たいてい銘柄選びではありません。欲望に負けて不要なものを買ってしまうこと。利回りの高さに惹かれてリスクの大きい商品に手を出してしまうこと。そして、耐えきれずに市場から退場してしまうこと。
頭の良さではなく、どう振る舞うか。知識より、行動。
この本には、地味な清掃員が長年こつこつと投資を続けただけで巨額の資産を築いた話が出てきます。一方で、破産した大富豪の話も出てくる。違いは、知っていたかどうかではありませんでした。
前に紹介した『人生の経営戦略』の記事でも書きましたが、「知っている」と「できる」と「やっている」は、まったく別のものです。ここでも同じ話が出てきました。
収入 − エゴ = 貯蓄
この本で一番腹落ちしたのが、この考え方です。
貯蓄は、収入を増やすことでは生まれません。支出を減らすことで生まれます。 そして支出は、欲望を抑えれば減らせる。では欲望はどうすれば抑えられるかというと、他人の目を気にしなければいい。
収入から、見栄を差し引いたものが貯まっていく。
冒頭のiPhoneの話は、まさにこれです。必要だから欲しくなったのではありません。必要ないと分かっていて、それでも欲しくなった。 これはエゴのほうです。
そして思い出したのが、前回書いた企業型DCの記事のことです。
16年で元本563万円が1,010万円になった。この元本のうち、月1万円の掛金で積み上がるのは約192万円だけで、残りは賞与から拠出した分です。あのとき私が書いたのは、賞与の一部を60歳まで引き出せない口座に入れるには、はっきりと我慢が要るということでした。
その我慢の正体が、この式でした。あれは節約ではなく、エゴを差し引く作業だったのです。
「ウェルス」と「リッチネス」は違う

この本は、お金持ちであること(リッチネス)と、富を持っていること(ウェルス)を分けて考えます。
リッチネスは、目に見える豊かさです。高い車、大きな家、いい時計。
ウェルスは、まだ使っていないお金です。使わずに取ってあるもの。だから、目に見えません。
そして本書が指摘するのは、裕福さを誇示する行為は、ただの浪費に終わることが多いということです。
ここで書かれていた指摘が、個人的にはかなり刺さりました。高級品を身につけている人を見たとき、私たちの関心はその品物に向かうのであって、持ち主には向かわないのです。
高級品で尊敬されると思うのは、順番が逆です。本来は「あの人が使っているのだから、いいものなのだろう」と思われるほうが正しい。物が人を引き上げてくれることは、基本的にありません。
47歳にもなると、身の回りにこの手の話は山ほどあります。そして、そういうものを買わなかった人のほうが、静かに資産を積んでいる。
自分がやっているゲームを明らかにする
本書に、こういう趣旨の指摘があります。バブルが起きるのは、短期トレーダーが作ったゲームに長期投資家が巻き込まれるからだと。
短期で売買している人にとって正しい行動と、20年持ち続ける人にとって正しい行動は、まったく違います。それなのに、同じ「投資」という言葉でくくられているから、他人の動きが気になってしまう。
だから、自分がやっているゲームを明確にしておく必要があります。

私の場合は、こうです。
インデックスファンド中心のパッシブ投資家。大きなリターンは狙わない。着実に、目標とする資産までゆっくり登っていく。
この本を読んで、自分のやり方が間違っていないと確認できたのは大きかったです。ギャンブルに近い投資ではなく、リターンは小さくても確率の高いものを選ぶ。それでいい、と。
他人が短期間で大きく儲けた話を聞いても、それは別のゲームの話だと切り分けられるようになります。
人生をコントロールできるということ
もう一つ、自分の生活に直結した話がありました。
本書は、最高の幸せとは今日という日に何をするかを自分で決められることだと書いています。
これは、私自身の実感と完全に一致しました。人は、自分が運転席に座りたいと思っている。誰かに何かをするよう仕向けられると、無力感を覚える。心理的リアクタンスと呼ばれるものです。
好きな仕事であっても、自分でコントロールできないことは辛い。私にとって一番のストレスは、自分の時間を自分で決められないことです。
正直に書きますが、これは可愛い娘のことであっても同じです。その日の予定をコロコロ変えられるのが、特に苦手なのです。書いていて我ながらどうかと思いますが、事実なので書いておきます。
そしてこれが、自分株式会社の根っこにある動機でもあります。会社に依存しない状態を作りたいのは、お金が欲しいからではありません。自分の時間を、自分で決められる状態が欲しいからです。
目指すのは金持ちではなく、経済的自立
本書が最後に置いているメッセージは、明快でした。
経済的に自立していれば、自分の判断ひとつで人生の道を変えられる。好きなことを、好きな人と、好きな時間に、好きなだけできる。
そして、そのために高収入は必要ないと書かれています。必要なのは、贅沢をせず、身の丈に合った生活をすること。
この本を読んでから、何かを買いたくなったとき、自分に問い直すようになりました。
これは、「好きなことを、好きな人と、好きな時に、好きな場所で」やるために必要なものか。
iPhoneについて言えば、答えは明らかにノーでした。今のところは、まだ買っていません。
この本について

『サイコロジー・オブ・マネー――一生お金に困らない「富」のマインドセット』 著者:モーガン・ハウセル 訳者:児島修 出版社:ダイヤモンド社
投資の手法を教えてくれる本ではありません。お金と自分の心の付き合い方についての本です。
短い章が積み重なっていく構成なので、忙しい人でも読み進めやすいと思います。私のように、資産形成をある程度続けてきたけれど、どこかで判断が揺れることがある人にこそ効く一冊です。
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